キルギスの国民的スポーツキョクボル(コクボル)について解説します。
キョクボルとは?
キョクボルは中央アジアの伝統騎馬競技でキルギスだけでなく、中央アジア諸国、アフガニスタンなどの周辺国で広く行われている馬を使ったスポーツです。
数年に一度開かれる「世界遊牧競技大会」でも正式種目として採用されています。
キョクボルのルール
キョクボルの詳細なルールはわかりませんが、観戦している中でわかってきたことをざっくりですが解説します。
キョクボルの基本的なルールは、馬に乗りながらボール(羊の頭と手足を落とし内臓を抜き砂をつめたもの)をゴールに入れるだけというシンプルなもの。
ルールこそシンプルですが、そのボールの重さは30㎏を超えるそうです。
試合時間は大会によって違う可能性がありますが、20分×3セットでセット毎にコートチェンジするのが基本のようです。
フィールドプレーヤーの人数は決まっているようで(7人?)、交代は自由みたいです。チームメンバーの数はチームによってまちまちなので最低人数から〇人まで見たいな感じで決まっているのだろうと推察されます。
審判の合図でコート中央上部(上図馬のイラスト)から下部(ヤギのイラスト)のところに走っていき、地面に置かれたボールを手でつかみます。
そのまま決められたゴールにボールを入れたら得点。
どちらかのチームがゴールを決めると、ボールはコートの真ん中、図のヤギのイラストのところまで移動。審判の合図で試合再開です。
ファールのようなものがあるらしく、その場合はそこから一番近いところにある円(上記図の中心にある3つの円)の中心にボールを置いて、1対1でそのボールを取り合います。
どちらかの選手がボールを取って円から出るまで他の選手は援護することができません。
キョクボルでは試合中断後の地味な一対一の戦いが結構好きだったりする。相手をいかにボールから遠ざけ自分がボールを拾いやすくするか、ボールを拾った後いかにゴールに向かって突き抜けるか、地味な中に両者の戦略が交錯している。
— 三矢英人 (@hideto328) April 23, 2016
個人の力量が問われる場面だと思ってて地味だけど結構好き。
細かいルールは国によって違うようで国際ルールはまだ統一されていないよう。そのため世界遊牧競技大会では主催国のルールで行わるので主催国が無双するとか。
キョクボルの3つの魅力
キョクボルの魅力は大きく3つあると思っています。
それは、
- 馬の疾走感
- 騎手の身体能力、制馬力の高さ
- 観客の盛り上がり
です。それぞれ解説していきます。
馬の疾走感と迫力
馬を使った競技なだけあってスピード感が魅力です。特に集団から抜け出し疾走する姿はキョクボル観戦のハイライトの一つ。
競技の性質上サッカーやバスケットのようにボールを投げてパスすることができないため、ボールは馬同士を激しくぶつけ合いながら力ずくで奪い取らなければなりません。
一方で、味方選手は相手チームにボールを取られないためにボールを持った味方と相手選手の間に強引に突撃し、割り込んでいきます。
馬と馬がぶつかり合うと激しい音が鳴り響き、迫力満点です。
落馬やけがは当たり前。コートの外には救急車が待機していて、残念ながら死者が出ることもあるとか。
タラスの選手、ボール投げた勢いで落馬しそのまま後続の馬に踏まれ、救急車出動。大丈夫か…。
— 三矢英人 (@hideto328) March 20, 2019
それだけ激しいスポーツなのです。
騎手の身体能力、騎馬能力の高さ
まず何よりも馬上から落ちないように地面にあるボールを持ち上げる身体能力の高さが挙げられます。しかも重さ30kgともいわれるボールを片手で持ち上げる力強さ。
敵チームの選手をかいくぐりながら馬から身を乗り出しボールを拾う姿はかっこいいの一言です。
持ち上げたボールは落とさないように、また相手選手に取られないように、足を手で持ち、胴体は足で挟んで固定しながら馬を駆ります。
ボールをゴールに投げ込むときには両手を使わなければいけないので鞭を口にくわえて馬を駆ります。なんという身体能力、騎馬能力の高さ……!
観客の盛り上がり
キョクボルは国民的スポーツなだけあって観客の盛り上がりもすごいの一言です。
基本的に地域ごとのチームなので地元選手を応援するだけあって気合いが入っています。
私は大統領杯とノウルーズ杯両方予選と準決勝、決勝を観戦しましたが、準決勝・決勝の盛り上がりはとにかくすさまじく、応援チームが勝っても負けても相撲の座布団よろしく空のペットボトルが飛び交います。
Ынтымакが立て続けに2点入れたようだが人多すぎて何も見えん! pic.twitter.com/UyWYI18hC6
— 三矢英人 (@hideto328) March 21, 2019
3-0!観客席ではペットボトルが飛び交ってます(相撲の
キョクボルノウルーズ杯2019最終結果
🐴第一リーグ
🥇優勝 Алкан Ата(タラス)
🥈準優勝 Келечек(ビシュケク)
🥉3位 Сон Кол(ソンキョル)🐴高位リーグ
🥇優勝 Ынтымак(タラス)
🥈準優勝 Достук(オシュ)
🥉3位 Бакбат Талас(タラス)圧倒的タラス! pic.twitter.com/yHOVYfN6oE
— 三矢英人 (@hideto328) March 21, 2019
座布団的な扱い)。— 三矢英人 (@hideto328) March 21, 2019
写真や動画を撮る分には人の少ない予選の方がいいのですが、超満員で盛り上がる試合もぜひ見てもらいたいところです(予選は無料で準決勝から有料になることが多いです)。
準決勝以降はスタジアムの周りに出店も出ますし、キョクボル以外の競技(競馬、鞭相撲、鷹匠など)も行われることが多いので一粒で二度おいしいですよ。
ちなみに北西部タラスのチームが強く、タラスは応援団も気合入りまくっています。
まとめ:機会があればぜひ現地で観戦して欲しい
時に猛々しく、時に颯爽と、まるで自分の手足のように馬を駆りフィールドを駆け抜ける姿は想像をはるかに凌ぐほどかっこよかったです。
日本で遊牧民族というと多くの人がまず思い浮かべるのはモンゴル人だと思いますが、ここキルギスも騎馬民族。滞在中にぜひ見たいと思っていた競技だったため生で見ることが出来て感動しました。
キルギスでは8月31日の独立記念日、3月21日のノウルーズ(旧正月みたいなもの)のタイミングで全国大会が行われているので機会があればぜひ見てみてください。
おまけ:映画「キョクボル」
キョクボルは2018年には彼の国で映画化もされています。
あらすじとしては「元有名選手が、故郷の村を救うため村人を鍛えてチームを作り、全国大会に挑むとかそういう感じの熱い話らしい」です。
「第三回世界遊牧競技大会」の興奮も冷めやまぬ中、9/20から封切られる国技キョクボルを題材としたルスラン・アクン監督の新作映画「キョクボル」の予告編。元有名選手が、故郷の村を救うため村人を鍛えてチームを作り、全国大会に挑むとかそういう感じの熱い話らしいhttps://t.co/uOb02IE6f2
— 露探【円谷猪四郎】 (@karategin) September 9, 2018
最後に映画のトレーラーと主題歌のMV載せておきます。
この映画すごく見たくてオシュバザールで何日か探したんですけど、DVDも主題歌のCDもどちらも見つけられなくて悲しい思いをしたんですよね。次行く時にまた探してみたいところです。
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