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【書評】そんな旅行記あり!?『イスラム飲酒紀行』のわかり味が強すぎる

高野秀行『イスラム飲酒紀行』単行本表紙 書評・音楽・映画
この記事は約6分で読めます。
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「イスラム×酒」、飲酒が禁じられたイスラーム圏に酒飲みが行くとどうなるか?

それがこの本を読むことでわかります。イスラーム建築が好きでイスラーム諸国によく訪問している酒飲みとしてわかり味が強すぎる旅行記でした。

今回は高野秀行著『イスラム飲酒紀行』について書評をしていきます。

『イスラム飲酒紀行』の詳細・基本情報

  • 著者名:高野秀行
  • 出版社:扶桑社

「辺境作家」の著者は、毎日酒を飲まないと一日を終えられない。取材でイスラム圏にいるときも必死でご禁制の酒を探す。そこで見えてきたイスラム圏の“建前と本音”とは?

『イスラム飲酒紀行 』アマゾン紹介ページより

著者の高野秀行ってこんな人

高野秀行さんは1966年東京都八王子市生まれ。早稲田大学探検部時代に執筆した『幻獣ムベンベを追え』でデビューしたノンフィクション作家です。

「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書く」をモットーに、コンゴの山奥にUMAを探しに行ったデビュー作を皮切りにミャンマーの奥地でアヘンを栽培した『アヘン王国潜入記』、アマゾン川を遡上した『巨流アマゾンを遡れ』、第35回講談社ノンフィクション賞を受賞した『謎の独立国家ソマリランド』など数々の著書があります。

『イスラム飲酒紀行』の特徴と感想

『イスラム飲酒紀行』は休肝日のないノンフィクション作家高野さんが世界中のイスラム国家に訪問する旅行記です。

今でこそ高野本を何冊も読んでいる私ですが、実はこの本が初めて読んだ高野本でした。

本来飲酒が禁じられているイスラム圏で酒を求め彷徨うさまが酒飲みには共感を誘い、酒飲みじゃない人には滑稽に映るという意味で、お酒を飲む人も飲まない人も楽しめるように仕上がっています。

帯のわかり味が強すぎる

この本の帯にはこう書いてあります。

タブーを暴きたいわけじゃない。酒が飲みたいだけなんだ!

イスラム圏が好きでよく訪れる酒飲みとしてはわかり味が強すぎます。

私もイスラーム諸国に行く旅にお酒を探して彷徨っていますが、何もタブーを犯したいわけではないのです。ただ単純にお酒が飲みたいだけなんですよ。

わかる。よくわかるよその気持ち。

この一文で酒飲みの気持ちを全力で代弁してくれるこの帯は、当時まだ高野さんを知らなかった私にこの本を買う決断をさせるくらいには強烈なインパクトを持っていました。

抱腹絶倒のありえない旅行記

「私は酒飲みである。休肝日はまだない。」で始まる各エピソードはどれも、そこまでして酒を探すか!?と思うほどぶっ飛んでいます。

例えば、アフガニスタンでは酒を手に入れるために「爆破」されていない中華料理屋を探し回り、イランではタクシードライバーに交渉してお酒を手に入れ、シリアではドルーズ派の作るワインを探し求める、など高野さんの酒への執念をい嫌というほど思い知らされます。

中でも秀逸だったのが、パキスタンでマリファナを勧められた高野さんの、

マリファナなんて子供のやるものだ。大人だったら酒。酒はマリファナとは比べ物にならないほどいい。中毒性も高いし、体に与える害もマリファナより大きいと思うがそれでもというか、それだけにというべきか、桁違いに美味い。味わい深い。

という意見。そこまで分かっていても酒飲みは酒が飲みたいのです。

イスラーム世界の「本音と建前」を知る

そんな本書ですが、読み進めていくにつれ、イスラーム圏の「本音」と「建前」を理解していくようになります。

中でも厳格なイスラーム教国として知られるパキスタンでは「病気の治療にアルコールが必要」という医者の診断書があれば、合法的に酒が飲める「ドクターストップ」ならぬ「ドクターゴー」とでも言うべきものがある、というのは衝撃的でした。そんな抜け道があったか。

私もイランで知り合いの家に遊びに行ったとき外では「イランではお酒はダメだ」と言っていたのに家に入ったら棚に堂々と日本のウイスキーが鎮座しているのを目撃したことがあります。イラン人は特に本音と建前を使い分ける民族という印象が強くあります。

こういう、「本音と建前」やイスラーム圏の一般の人たちについて知ることができるというのもこの本の大きな魅力の一つと言えるのではないでしょうか。

『イスラム飲酒紀行』はこんな人におすすめ

まとめると、この本は

  • 高野秀行の著書が好き
  • 中東の旅行記に興味がある
  • 休肝日のない酒飲み
  • イスラーム教徒を怖いと思っている

人にお勧めです。

全体的にライトな文体で(高野さんの本はほとんどがそうですが)、分量も多くないので高野秀行さんの本を初めて読むという人にもお勧めできる本です。

少なくとも私はこれまで読んだ高野本の中で、この『イスラム飲酒紀行』が一番好きです。

この本はまた、一般的な日本人が持っているイスラーム像をぶち壊してくれる本でもあるので、中東やイスラーム圏に興味がある人、旅行してみたい人、旅行したことがある人はもちろんのことイスラーム教を怖いと思っている人にもお勧めできます。

そのほかのおすすめ高野本

何冊も読んでいる高野さんの著作の中で、特におすすめな本を何冊か紹介します。

謎の独立国家ソマリランド

ソマリランドという国を日本中に知らしめた本。高野さんの読みやすくライトな文体ながらソマリランドだけでなく、プントランドや南部ソマリアの危険地帯を旅行していくハードボイルさも併せ持つ名著です。

この本に影響されすぎてソマリランドまで聖地巡礼の旅に出たのは他でもない私です。

アジア新聞屋台村

高野本の中では比較的マイナーですが、高野さんが若かりし頃働いていた多国籍新聞社でのドタバタ劇を描いた本。登場人物がどれも魅力的でこんな会社で働いていたら大変だけど楽しそうだなーと思いました。

アヘン王国潜入記

ミャンマー北部の反政府ゲリラの拠点に潜り込み、ケシをいちから栽培した挙句アヘン中毒になってしまうという超体当たりルポ。

関係ないけど、

マラリアが猛威をふるっているコンゴですら、蚊にボコボコに刺される日が何カ月もつづいたあげく、運の悪い者がかかるくらいなのである。

という言葉はアフリカ旅行中の僕を何度も勇気づけてくれました。

書評・音楽・映画
三矢英人

バックパッカー/トラベルライター/チェコ親善アンバサダー2018/米国公認会計士(USCPA-Inactive)

1986年神奈川県生まれ。「行きたいところに行き、見たいものを見て、食べたいものを食べ、飲みたい酒を飲む」をモットーに2013年11月から2019年4月まで無帰国長期旅行していました。

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